独学で大学受験 14 脱保育園

 

2006年は、あまりに多くのことがタイミング良く、爆速で起きたので、書いていても散らかってしまう。

整理しよう。

2006年には、第一子が通うと思っていた野殿童仙房小学校が廃校となった。その時点で、第一子は小学生になるのを1年後に控えている。同時に、第一子が通っていた野殿童仙房保育園が廃園となった。それらと同時に、京都大学大学院教育学研究科と大阪の生協アルファコープが童仙房に来ることになった。京大と生協の活動は、短期間にあっというまに立ち上がった。

2006年3月まで、第一子は保育園児であった。それが、3月末をもって、保育園児でなくなった。他の子たちは、統合保育園に継続して通うことになったが、わが家では、先の記事で書いたように、村の教育行政に絶望していたので、統合保育園に通わせることはためらわれた。

3月31日まで保育園に行っていたのに、4月1日から保育園に行かなくなった。第一子は、保育園をそれなりに楽しんでいたので、どうしていかなくなったのか、と何度もきいてきた。保育園がなくなっちゃったと説明してみても、どうして?となる。やはり保育園に行かせるべきなのだろうか?

ためらいつつ、しばらく様子を見た。

時間はたっぷりある。おもちゃや文房具などの道具もふんだんにある。家の外には土も木も石もある。山も水もある。なのに、「ヒマや」「することがない」「何して遊んだらいいの」と朝から晩まで言っている。テレビを見ても、昼間は面白い番組をやっていないようだ。なぜ、何もできないのだろう?

第一子を観察していて、気づいた。自分では遊べないのだ。時間を自分で使えないのだ。今までは、保育園に通っていた。保育園では、遊び方も、必要な道具や材料も、遊ぶ時間も、全部用意してくれる。何も考えなくても、先生が導くとおりに従っていれば、楽しく遊べ、時間を過ごせる。保育園とはそういうところであり、一生懸命子どもたちのことを考えてくれる保育士さんだからこそ、なおのこと、そうなる。子どもはその環境に依存する。創意工夫や自発、主体性は失われる。保育園や保育士を批判しているのではない。そういう仕組みのものなのだ。仮に、子どもたちを放置して何も導いてくれない保育園や保育士があれば、どうだろう。たぶん、親たちがクレームをつけるだろう。良い保育園、良い保育士であればあるほど、あれこれ用意し段取りし導くだろう。それは子どもたちにとって、阻害要因になってしまっていないだろうか。

となれば、学校もそうだろう。子どもたちにすべてが用意される。そのように導いてくれるのが良い学校であり良い先生である。学校を批判して「○○教育」「○○メソッド」などが開発される。しかし、これらも、用意し導くという点では大きく変わらないかもしれない。何もしない学校があるかどうか。イギリスでニイルが始めたサマーヒルは大人が子どもに対して何もしない(管理しない)学校だった。それが世界各地に広がり、日本にもその思想にもとづくスクールがある。しかし、何の導きもないと、学力は育ちにくい。子どもたちの阻害要因にならない導き方となると難しいのではないか。

そんなことを日々、考えた。夫婦でも毎日そういう対話をした。

おもしろいことに、時間が解決した。

保育園に行かなくなって2カ月ぐらいの間は、第一子は毎日ヒマをこじらせていた。ヒマすぎてもだえ苦しんでいた。2カ月ほど経つと、急に変わってきた。「ヒマ」という言葉をあまり口にしなくなった。「ヒマ」とは、自分の時間を生かせていない現れで、人生を有意義に生きていないとも言える。望ましい言葉ではない。

そして、自分で、1人で、いろんなことをやりだした。本をじっくり読んだ。木や石で見たて遊びを自由自在にできるようになった。文房具や紙で、自由自在に絵を描いたり工作したりするようになった。自由自在にとは、誰も何も用意せず、導きもせず、まったく自分の意思と考えで行うということだ。これはクリエイティブ、つまり創造に他ならない。

第一子の表情は明るくなり、立ち居振舞いに活気が満ちてきた。自分の時間を自分で過ごせるようになった。つまり、人生を有意義に生きられるようになってきた。

第一子が保育園に通っていたとき、親である私は何の疑問も感じなかった。毎日、保育園に楽しく通ってくれていて、それがうれしかった。が、それは、見えないところで、子どもの創造性を疎外していたのだが、まったく気がつかなかった。

6月以降は、第一子は、保育園に行きたいと言わなくなった。保育園に行っていたときとは、雰囲気も行動も変化を感じる。創造性を身につけたことを感じる。

さて、翌年4月には小学生になる。どうするか。結論は出ていない。ただ、京大と生協が童仙房に来るようになったのだから、他地域への引っ越しは選択肢からはずれる。となると、オルタナティブ教育か。

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