独学で勉強するために 9(書き写し)

前回からの続き。

独学を進めるには、「読み書き」の高度な土台が不可欠です。読み方も、ただ読むのではなく、マネとかモデリング、ようするに、そのお話に「なりきる」ことです。

「読むこと」の次は「書くこと」です。書くことにおいても、ひたすらマネ(モデリング)です。これは、日本ではとても伝統的な学習法です。新しいメソッドではありません。視写という言い方もします。私たちの先人たちは、師匠の文章や本を、心を込めて丁寧に書き写すことで、知性を高め、さまざまなスキルを身につけていきました。この方法は、時間がかかる上に、効果も見えにくいでの、いつのまにやら、忘れ去られてしまったかのようです。

ところが、効果的なはずのカリキュラム学習で、いったいどれほどの「表現力」が身についているのでしょう? とくに近年の子どもたち、若者たちの(文章による)表現力の衰退ぶりは、目を覆うばかりです。日本が滅びるのではないかと心配になるほどのひどい状況です。文章力は、手で書くしか、向上しません。非効率的とバカにしたはずの視写が、最も効率的で効果的なのです。視写を上回る文章上達法は、たぶん存在しないでしょう。

文章力だけではありません。心を無にして、ひたすら書き写すことで、先生(師匠とか本とか)の知性、スキル、人生経験を、そのまま頂くことができます。書き写しは、人となりを磨く、大切な学び方なのです。これは、年配の方々なら、当然のように理解している方も少なくないでしょう。

あまりに奥深く、効果も無限大でありながら、方法はきわめて単純です。

使う道具は、原稿用紙と鉛筆。そして、本。パソコンやスマホは論外ですし、シャーペンも避けましょう。原稿用紙を正しく使います。原稿用紙の使い方は、小学校で習うはずです。

本は、モデリングの対象としてふさわしいもの、という観点で自由に選べばいいです。小学生に漱石や鴎外は難しすぎるでしょう。最初は昔話がいいかもしれません。国語の教科書もいいでしょう。気に入った読み物があれば、それもいいでしょう。中学生、高校生になっていると、やや手ごたえのある本を選んだ方がいいでしょう。おすすめは、明治~戦後間もなくあたりの文豪です。夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、川端康成・・・いくらでもいます。その時代は、現在と比べ非常に厳しい世相でした。悩みに悩み抜いて生きるなかから生み出された作品は、たいへんな重みがあります。文章も、磨き抜かれています。

毎日続けます。1000枚書けば、変化を感じるでしょう。2000枚書けば、文章で悩むことはなくなるでしょう。3000枚書けば、「あるライン」を越えます。1日1枚で10年。1日3枚で3年。がんばって、1日10枚なら1年です。

簡単なことですし、大きな時間がかかるわけでもありません。継続は力なり。他のどんな勉強よりも、かけた時間に対する効果は絶大です

次回へつづく。

 

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