独学で大学受験 23 巻き返し

 

第一子は、小学生の頃、ほとんど勉強しなかった。小学6年生の半ばから小学生の勉強を始め、中1の12月から中学生の勉強を始め、高1年齢(高校生ではない)の4月から高校の勉強を始め、高3年齢の3月で高校の勉強に区切りをつけた。

その間、だれからも勉強を習わず、完全独学だった。小中高に1日も通っていない。塾も習い事もなし。ゼロ歳の時から大量の読み聞かせ、そして自然と本を読むようになり、大量の読書。小1から毎日原稿用紙1枚の書き写し。書き写しは小学生の間はサボりがちで2日に1枚程度だったが、小6からは毎日継続した。中1からは、1日3枚書いた。高3までに5000枚は書いただろう。これが第一子の強固で盤石な土台である。

この土台づくりは、特別な能力は必要なく、お金もほとんど必要なく、誰でもできるものである。けれども、だれもやらない。戦前までは、この土台づくりは珍しくなかった。いまは、知の身体化の意義が見えにくくなっている。だから、だれもわからない。完全独学で小中高の内容を習得するにはこの土台が不可欠である。第一子は、挽回不可能なほど勉強がおくれていた。でも、巻き返した。この土台がなければ不可能だった。

第一子は、高2年齢で高認(高等学校卒業程度認定試験)に合格した。高校は卒業していないが、高認があると、高卒と同等に扱われる。大学受験も可能だし、高卒資格が必要なものはたいだいOKだ。高認試験は、大学入試センター試験や共通テストを易しくしたような作りだ。しっかり学校の勉強をしていれば、高校1年生でも合格できる。それでも、勉強をしていなければ無理だ。何年もかけて高認にチャレンジし続ける人もいる。小中高の勉強をしっかり習得できていなかったり、中学卒業後長年のブランクがあったりすると困難だろう。

第一子はさらに高3年齢の秋に普通自動車運転免許を取得した。童仙房から教習所へ通うのは著しく困難なので、合宿免許に行った。高3年齢の3月ごろ、つまり高校卒業あたりで、自動車の運転はふつうにできた。

では、その後、どう生きていくか。小中学生だった頃から、常に話はしてきた。会社で働くなら、中卒扱いとなり、困難かも知れない。高校の勉強をしっかり習得し、さらに多様で多量の読書をしていれば、ユニークな存在になれるかもしれない。完全独学で小中高の内容を高度に習得した人はほぼいないだろう。これはウリになるかもしれない。

でも、企業に勤めるなら、そもそも苦労してホームスクーリングなどせずに、学校に通った方がいいのではないか。道としてもそのほうがわかりやすい。

では、起業するのか。ホームスクーリングならば、むしろそのほうがいいかもしれない。でも、道は険しいだろう。第一子は、起業のための勉強も取り組みもまったくしなかった。だから、さしあたっての起業はない。

地元で声をかけてくださる方がいて、高卒年齢で、いくつかアルバイトをした。農業、土木工事、民宿など。社会経験にはなっただろう。だからといって、それらを職業としていく考えはないようだ。

高卒年齢1年目、19歳で、英検2級に合格した。

中途半端な状態を続けていてはよくないので、高卒年齢1年目の冬、自動車工場へ派遣社員として勤めに行った。いわゆる期間工である。自宅を離れ、アパートで一人暮らしをした。工場なので、夜勤もある。半年間勤めて高卒年齢2年目の7月に童仙房へ戻ってきた。いい経験になっただろう。

今後、どうするか。

いつまでも自宅で親と暮らしていくのはダメだ。いままでがホームスクーリングだったのだから、時が来れば親から離れ、自分で道を拓いていくべきだ。私も妻も、強くそう言った。第一子にとって、童仙房の自宅が居心地いいらしい。

ちょうどそのとき、第二子が大学へ行きたいと言い出した。そうか、その道があるのかと、ある日、第一子が言った。「京大へ行きたい」と。

そもそも私は大学進学も提案し続けて来た。大学へ行ってもいいし、働いてもいい。親が決めることではない。自分でよく考えなさい、と。大学へ行くなら、なんとなくではなく、やりたいことを明確に持って行くこと。

第一子は、大学へは行かないと言っていた。だから私も、そのつもりでいた。第二子が言い出したからというだけではなく、半年間工場勤務するなかで、いろいろ考えて大学を思うようになったとも言っている。工場勤務がなければ大学進学は希望しなかった、と。

それにしても極端だ。

あんなに勉強嫌いだったのに、しかも高校の勉強を終えて1年半もブランクを作っておいて、京大を受ける? 京大受験がどういうことなのか、わかっていないのかもしれない。

でも、自分で言い出したことだ。思うようにさせてみよう。受験勉強も独学だ。ただ、受験勉強の仕方や考え方、ノウハウなどはサポートしよう。

2020年8月のことである。ホームスクーリング家庭が、突然受験家庭となった。えらいこっちゃ!

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