大学受験5 文系と理系

前回、リベラルアーツについて書きました。わが家での進路選択に関するからです。

人間とは何か?

現在は、理系の方が就職に有利ですし、高校生の理系志望がふえることは当然でしょう。理系といっても、人工知能と遺伝子に関する分野が急激に成長しています。さて、今の若い子が社会で活躍する頃、人工知能と遺伝子分野が急激に成長し続けているでしょうか? 今以上に加速して成長しているかもしれません。

『シンギュラリティは近い―人類が生命を超越するとき―』レイ・カーツワイル/NHK出版)では、2045年に向けて、コンピュータの性能が指数関数的に進化し、人類が人工知能と一体化した人類2.0に、生物学的に進化すると言っています。そうなると、人間はもはや、何もする必要がなく、食事を取る必要さえなく、体さえ不要で、あまつさえ脳までもなくてもよいとのことです。そんな状況を人類は経験したことがありません。コンピュータが進化するにつれ、「人間とは何か?」が問われざるを得ないでしょう。遺伝子もそうです。遺伝子操作により、生物学的な加工が自在になってくると、「人間とは何か?」が問われざるを得ません。

現在でもすでに、「人間とは何か?」が問われつつあります。

かつては、理系の科学者たちも、文学や哲学を深く学び、リベラルアーツを身につけた上で研究にまい進する方が多く見られましたが、現在は、極端な文系軽視と、試験に出ることだけやればいいという受験の弊害のため、リベラルアーツがかえりみられにくくなっています。

怖い未来

『サピエンス全史―文明の構造と人類の幸福―』(ユヴァル・ノア・ハラリ /河出書房新社)が大ベストセラーとなり、読んだ方も多いでしょう。人間とは何か、に対して1つの答えを出しています。

その続編である『ホモ・デウス―テクノロジーとサピエンスの未来―』(ユヴァル・ノア・ハラリ /河出書房新社)は、人類の未来を描く力作です。

今日、世界中の大型動物の9割以上が人間か家畜です。野生動物はわずか1割です。家畜は野生動物の7倍です。その家畜に対して、人間は、身動きできない空間にとじこめ、食肉を生産するにひつようなエサを与え、薬を使い、繁殖を行い、次々と食肉にしていきます。家畜はアルゴリズムそのものです。

アルゴリズムとは、計算をし、問題を解決し、決定に至るために利用できる、一連の秩序だったステップのことをいう。アルゴリズムは特定の計算ではなく、計算をするときに従う方法だ。

『ホモ・デウス』では、アルゴリズムというキーワードが頻出します。そして、アルゴリズムを与えるのは人類に他なりません。

人間は下等動物(家畜)を生き物ではなく、モノとして扱っています。人工知能が人間より賢くなったとき、下等動物である人間をそのように扱ってよいかどうか。人間が家畜を扱うように、人工知能が人間を扱ってよいか。現在の人類がコンピュータに与えるアルゴリズムは、人類の哲学から生じます。人類が世界を征服し、何をしてもよいなら、それをアルゴリズムとして人工知能に与えたとき、人工知能のアルゴリズムは同じように作動するでしょう。人類を上回った人工知能が世界を征服し、人類を含む家畜をどのように扱ってもよい、と。それとも、人間の命に、動物とは違う価値を与えるのでしょうか? 人間は、他の人間との競争に勝ち、征服し、支配するアルゴリズムを持っています。国同士がエゴをぶつけ合い、戦力を増強して力を誇示し、強い者勝ちの国際関係を作っています。それがそのまま、人工知能のアルゴリズムとなっていきます。

『ホモ・デウス』で指摘されていることですが、深刻な、喫緊の課題でしょう。

文系学問が人類を救う

『人新世の「資本論」』(斎藤 幸平/集英社)がベストセラーとなっています。我々は、人類のパラダイムを大転換しなければ、生き残ることができないのではないかという危機感から書かれた本です。「人新生」とは、人間の経済活動があまりに大きくなりすぎ、地球を破壊することさえ可能になるほど影響力が大きくなった地質年代のことを言います。

『地球外生命と人類の未来―人新世の宇宙生物学―』(アダム・フランク/青土社)は、地球外生命の存在する確率を科学的に求める内容ですが、条件を掛け合わせていく最後の項が、「文明の寿命」です。どんな生命体であれ、文明を発展させると、「人新生」を必ず迎えます。人新生を生き延びることが可能であるなら、文明の寿命は長くなるでしょうが、不可能であるなら、文明の寿命は著しく短いものとなります。地球上の人類はすでに人新生を迎えていますが、生き延びられるかどうか、シミュレーションをしたところ、それは隘路(あいろ=非常に狭い道)であるという結果が出ました。

『地球が燃えている ― 気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言―』(ナオミ クライン/大月書店)は、気候変動の現状をかんがみれば残された時間はあと10年であると訴えています。

これらは、人類のパラダイムの転換を強く促しています。このような書籍は、非常にたくさん出版されています。

科学技術の進展や、部分的な補修では間に合わず、根源的なパラダイムの転換です。人類が経験したことのない課題です。その答えは明らかになっていません。人類が総力をあげて取り組むべき課題です。まさに必要なのは、文学、哲学、歴史といった、金儲けの役に立たないとされてきた文学部の学問をはじめとする人文・社会系の叡智です。

文理融合

しかし、文系の弱点は、数学が苦手な方が多く、理科の知識も乏しいことです。これでは、人工知能や遺伝子の進化についていけません。数学が苦手だと、論理思考も甘くなるでしょう。理系の弱点は、人間に対する理解の浅さです。つまり、文系は英語、国語、社会を勉強するでしょうが、数学と理科もやらなければいけないし、理系も国語や社会をやるべきでしょう。

国公立大学なら、共通テストで全科目が必要です。全科目で高得点をとれる程度に勉強することが必要でしょう。社会や理科は選択ですが、選択していない科目でも自主的に(大学入学後であっても)修得するべきでしょう。私立大学は受験科目が少なくてすみますが、やはり全科目を勉強した方がいいでしょう。それはまさにリベラルアーツです。

ハルとナツ(と、アキとフユ)には、そういったことを常々話しています。文系は将来有望です。ただし、リベラルアーツをふまえるならば。続きは次回へ。

 

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