アフターコロナ 4(オンライン学習)
前回、身体と心を持つ存在であることが教育の基本だと書きました。
コロナingによって、世界中で人びとはリアルな活動やつながりを停止し、家にこもらなければならなくなっています。断続的に長期間つづきそうだという予測が主流になりつつあるようです。学校も、世界の広い範囲で長期間の休校に追い込まれています。
仕事はテレワークで、勉強はオンライン学習で、というのがトレンドです。その流れは、アフターコロナでも、続くでしょう。人工知能の進化を思えば、アフターコロナでは、加速すると考えるのが順当でしょう。仕事をテレワーク中心にすれば、ワークライフバランスも改善されるでしょう。勉強でオンライン学習を取り入れていけば、種々の制約からのがれ、現在できないことが可能になったり、幅が広がったりするでしょう。その恩恵は、非常に大きいはずです。
ただ、私は不安も感じます。オンラインのマイナス面をいうのではありません。オンラインを活用することの難しさです。その難しさは、大きく2つあります。
1. スキルとしての難しさ
2. 体系化の難しさ
です。
話をオンライン学習にしぼります。「スキルとしての難しさ」は、まあ何となくでも伝わるでしょう。オンライン学習を設計し推進しているのは、エリートです。「できる人たち」です。「できる人たち」は、なんとなくスマホやパソコンを利用している多くの人びとを越えたスキルを想定しています。
オンラインサービスを利用するには、サービス内容(IT用語を用い、論理的な表現で書かれています)を理解し、アカウントを作成し、パスワードを管理しなければなりません。動画で授業を受ければ、ワープロや表計算でレポートや課題を提出する必要があるでしょう。自分の電子メールを作成し、設定し、メーラを使って送受信や管理をしなければいけません。セキュリティは自己責任です。パソコンやタブレットの不調には自分で対応しなければいけません。そもそも、フォルダ、ディレクトリツリー、拡張子、圧縮・解凍など、パソコンで他人とやりとりするには必須となるはずの基本事項を理解していることが誰にとっても当たり前であるとは思えません。「できる人たち」は、国民の多くが、同じように「できる人たち」だと思っています。
2000~2010年ごろは、若い人たちはほとんどがパソコンを使い、ワープロや表計算を「いくらかは」使っていました。何の仕事をするにも必須のスキルでした。2010年以降は、だんだんスマホ世代となり、パソコンのスキルは目に見えて低下しているようです。オンライン学習に必要なスキルは、どうやって身につけたらいいでしょうか?
でも、2番目の「体系化の難しさ」はもっと困難な問題です。オンライン学習を推進する人たちが、そのことに気づいているかどうかわかりません。まったく眼中にないと見える人たちも少なくありません。
子どもたちが、オンライン学習に必要なITスキルを身につけたとしましょう。それで、オンライン学習をどんどんやって、学力が向上するでしょうか?
おそらく、オンライン学習を上手に活用して学力を向上させられる子たちもいるはずです。そういう「成功例」を見て、他の子たちにもできるはずだと考えるのは危険です。前回、ITの根本はデータベースで、データベースの肝は番号だといいました。データベースは、魔法です。人間の知能や知識ではとうていたどりつけないことを、いとも簡単に実現します。コンピュータの性能は指数関数的な進化をしているので、データベースの威力も指数関数的に向上しています。
ITは、番号をつけることが力の源泉です。であるなら、オンライン学習の「系」は、番号の付与によって成り立っています。人間の脳の活動のすべてはデジタル化が可能である、アルゴリズムで置き換えることが可能であると、「できる人たち」は考えているようです。
もしそうなら、私たちは身体も脳も必要としません。ならば、コロナ危機はいとも簡単に消滅するはずです。
そうはならないですね。何かが違っています。人間は、番号ではない、つまりアルゴリズムではない何かを大切にして生きています。
なんか、小難しいことをいっていますね。続きは次回にします。