日本と世界13(第2のヒミコ)

前回、第1のヒミコについて書きました。魏志倭人伝に書かれたヒミコ(卑弥呼)は、実際には2人のヒメミコであり、190年ごろ、ヤマトに祭祀で平和をもたらしたモモソ姫が第1のヒミコです。モモソ姫により、第1次物部東征は失敗に終わりました。

大分県北部に宇佐神宮があります。全国にある八幡宮の総本社であり、古来、皇室の崇敬を受けているほか、奈良時代の宇佐八幡宮神託事件でも知られます。称徳天皇から寵愛を受けた道鏡が、宇佐八幡宮から「道鏡が皇位に就くべし」との託宣があったとして天皇位を得ようとしました。間一髪でことなきを得たのですが、記紀が書かれて以降は貫かれている「万世一系」が損なわれ、皇族でない民間人が天皇となるところでした。

宇佐神宮には、大きな力があるようです。記紀よりはるか昔、ヒミコの時代には、宇佐神宮の勢力は強く、東九州から西中国にかけての地域が豊王国と呼ばれていました。豊王国の中心は宇佐でした。宇佐宮の(当時の)主神は月の女神(月読命〈つくよみのみこと〉)です。記紀では、伊弉諾(イザナギ)が生み出した神で、天照大神の弟、素戔嗚尊の兄にあたりますが、母系社会なので女神です。宇佐(うさ)はうさぎから転じた名です。宇佐家が豊王国の王家です。なんでここで宇佐神宮をとつぜん言いだしたかっていうと、第2のヒミコがここにいたからです。ただ、宇佐神宮だけでは、第2のヒミコは誕生しません。

物部の本家(徐福の子孫)は筑後平野(吉野ヶ里遺跡)にいました。232年ごろ、物部王国の御真木入彦(みまきいりひこ)王は、第2次物部東征を決断しました。そのため、まず、東九州へ向かい、兵力を蓄えることにしました。御真木入彦(みまきいりひこ)王とは、イニエ王のことで、天皇系図では第10代崇神天皇とされています。ヤマトの大王ではなく、物部王国の「地方の王」でした。

イニエ王は、南へ向かい、薩摩半島の笠沙(かささ)で美しい乙女に会いました。アタの豪族の娘で、アタツ姫と呼ばれました。イニエ王は、アタツ姫を后に迎えました。この史実を、記紀は神話で伝えます。

ホホデミは大山津身神に対し、娘の「木ノ花咲クヤ(このはなさくや)」姫を后に迎えたいと述べました。すると姉の石長姫(いわながひめ)も一緒に迎えてくれ、と神は述べ、もし姉を返すならば、あなたは短命になるだろうと警告した。しかし姉は醜女(しこめ)だったから、ホホデミは実家に返した。

ちなみに、記紀で出てくる神は、大部分が実在の人物です。

イニエ王は鹿児島の南を船で回り、宮崎県西都市にあった都万(つま)国の大淀川河口に上陸しました。魏志倭人伝にヤマタイ国への経路が書かれているうちで、ヤマタイ国の1つ前にあたる投馬(つま)国が、都万国にあたります。

イニエ王は、都万国に都を造りました。これは、現在、西都原(さいとばる)遺跡として確認されています。

第1次物部東征が失敗した理由は、巫女のいない物部勢力が、磯城王朝の三輪山の姫巫女の権威に太刀打ちできなかったことです。当時は、武力で人を支配することができず、巫女の祈りこそが、人をまとめることができたのです。九州では、宇佐の月神の信仰が人気があり、それを基として、豊王国が形成されていたのです。イニエ王は、そこに目を付けました。つまり、豊王国と連合する計画を立てたのです。

都万国でイニエ王の后であるアタツ姫がイクメ王子を産みました。神話で書かれているとおり、出産後まもなく、アタツ姫(コノハナサクヤ姫)は亡くなりました。

そして、イニエ王は、宇佐から豊玉姫を后として迎えました。この豊玉姫こそが、第2のヒミコです。豊玉姫は、王子と王女を生みました。名を豊彦と豊姫といいます。記紀の製作者は、魏志倭人伝を嫌いました。万世一系が否定されるからです。そこで、史実が神話に変えられました。海幸彦と山幸彦のお話です。豊玉姫は、竜宮の乙姫・豊玉姫です。イニエ王は山幸彦です。豊彦はウガヤフキアエズ。山幸彦と海幸彦が戦って山幸彦が勝つので、山幸彦が物部氏、海幸彦が海(あま)家(初代大王である海村雲の子孫)です。

さらに記紀は、都万国と薩摩半島の中間点の高千穂を物部氏の祖が天下りした場所に想定しました。

ちなみに、高天原のモデルは、ヤマトにあります。最初に出雲族が移住した葛城の少し南にある御所市に高天彦神社があり、その奥に「史跡 高天原」の石碑が建てられています。ヤマトの人びとは、祖先の霊が集まる場所と考えていました。

高天彦神社

「史跡 高天原」の石碑

さて、都万王国と豊王国は結合して、都万・豊連合王国となりました。ヤマトの戦乱を嫌い、西日本の豪族が都万へ移住してきました。ヤマトに住んでいた物部関係者も都万へ移住してきました。各地の有力者を続々と都万へ集めました。都万は、ヤマトに次ぐ第2位の人口密集地になりました。

いよいよ、第2のヒミコが魏へ使いを出します。次回へ。

 

 

 

 

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