大学受験14 思考の構造化
前回、小中高の勉強はロジックであり、ロジックとは抽象概念であり、その正体は構造化だと書きました。構造とは、階層構造つまりツリー構造のことです。
限界数字「7」
「7」という数字は、昔々から世界中で特別視されてきました。7不思議、ラッキー7、7つの○○、1週間は7日。昔話では、世界共通で3つの繰り返しが共通概念ですが、7も特別扱いされます。なぜ世界共通で7が特別かという理由はさまざまに説が立てられています。その中の1つをご紹介します。
『選択の科学』(シーナ・アイエンガー/文芸春秋)は選択の持つ力を研究した本です。「7」は、人間に処理可能な情報量であるとのこと。知覚判断の限界が「7」であるとのことです。人間の脳は7つまでのことしかこなせません。
同書にジャム実験が紹介されています。店舗内で、24種類のジャムと、6種類のジャムのそれぞれで試したところ、買い物客のうち試食に立ち寄った客の割合は、24種類の場合が60%、6種類の場合が40%でした。選択数が多いほど試食したがります。ところが、試食に立ち寄った客のうち実際にジャムを購入したのは、24種類の場合が3%、6種類の場合が30%でした。豊富な品揃えは見物客を引き寄せただけで、商売としては失敗だったということです。つまり、選択肢が多いのは客にとってよいことだと考えがちですが、多すぎる選択肢は逆効果なのです。適切な選択肢は最大で7ということです。
情報の扱い方
しかし、私たちが考えなければならないこと、処理すべき情報は、とても7つではおさまりません。小中高の勉強も、何をどう取り出しても7つでおさまるはずなどありません。で、どうするかというと、構造化するのです。勉強のできる人、論理的な思考のできる人は、意識しようとすまいと、頭の中で、あるいは明示された図として構造化をしているはずです(超人でないなら)。
それはどういうことかというと、下の図をご覧下さい。
この図は3階層のツリー構造です。限界数字を意識するなら、各階層は7つまでです。7つずつのノードを配置すれば、7×7×7で343項目を扱えます。これは、第3階層のノード数です。4階層のツリー構造なら、2401項目です。5階層なら16,807項目です。6階層なら117,649項目です。7階層なら823,543項目です。階層数が限界数字に達しました。これ以上を扱いたいなら、別の独立したツリー構造が必要です。独立したツリー構造が7つを超えるなら、ツリー構造を管理するためのツリー構造を作ります。理論上、人間の脳が扱える情報量を無限大にできます。とはいえ、実際には別の生物学的な限界ラインがあると思いますが。
なぜ、東大生のノートは美しいか
『東大合格生のノートはかならず美しい』(太田あや/文芸春秋)という本があります。東大生のノートをたくさん集め、分析したところ、共通点があるという趣旨です。著者が示す「東大ノート7つの法則」(あ!やっぱり「7」だ!)は素晴らしい指摘ですが、私は東大生のノートに構造化を見て取ります。おおむね7つ以下におさまるよう構造化がなされています。じつはそれこそが美しさの根源ではないかと思っています。
東大生といえど、ほとんどは超人ではなく普通の人間です(まれに超人がいるかも知れません)。7つを超える情報を処理することはできません。なので、どうやって無限大めざして限界を拡張するかが勝負です。拡張スキルの高さが偏差値に連動すると考えてよいでしょう。
ちなみにこの本の企画は大ヒットし、続編が刊行されています。『東大合格生のノートはどうして美しいのか?』『東大合格生の秘密の「勝負」ノート』です。その中で、京大生のノートも紹介されています。東大生のノートと同じく美しいが、違いもある。東大生のノートは「迫力ある美しさ」で、京大生のノートは「自由でユニークな美しさ」とのことです。両大学の学風がそのまま受験生のノートに反映されているようで、興味深い分析です。そのような違いがあってもなお、京大生のノートもきっちり構造化されているのです。続きは次回へ。