独学で大学受験 8 昔話の読み聞かせ

 

第一子が3歳になる少し前に、第二子が生まれた。第一子がまだ宇宙語を話していた時期だ。ここまで書いてきて読み返してみると、第一子の子育てがきわめて順調に首尾良く進んでいたように見えてしまう。そんなことはまったくない。なにしろ、新米のパパとママだ。試行錯誤の連続で、今から当時を振り返ると、第一子に申し訳なく思うことばかりだ。

第一子は生後6カ月で読み聞かせを始めたが、第二子は生まれると同時である。第一子に読み聞かせているのを聞いている(聞いていないかも知れないが、横にいる)からだ。4人の子が2年半間隔で生まれてきたので、読み聞かせは休みなく継続した。

第一子が3歳ごろ、つまり宇宙語を卒業して日本語をしゃべるようになったころ、絵本と字が中心の本を混ぜながら読み聞かせた。となると、第二子は生まれて半年もたたないうちから、文字が中心の本を聞いていたことになる。生まれたときから図鑑のコンプリートセットがあったことになる。

読み聞かせを始める時期も、字が中心の本に切り替える時期も、図鑑を買う時期も、第一子の時には考えたが、第二子以降は、考えることに意味がなくなった。全部、生まれたときから始まっている。第三子、第四子も同じだ。下の子ほど、生まれた直後から、難しめの本を聞いている。もちろん、絵本も聞いている。

わが家の経験から言うと、早すぎることに何の問題もなかった。それはそうだろう。聞くことをもとめずに、ただ読んだだけだから。子どもたちからすると、ただそこに本を読んでいる親がいるだけで、聞こうと聞くまいと、どのように過ごしてもかまわない。もし、私の体験を参考にしようとする人がいたら、念を押しておきたい。子どもに聞かせようとしたら、聞くことを求めたら、たぶん読み聞かせは失敗する。図鑑も、そこにあるだけで、手に取ることさえ求めなかった。

親が読み聞かせをしていると、意味がわかっていると思えない時期でも、けっこう聞いている。読み聞かせをしてもらっていると、心地良いのかもしれない。何もしなくても、図鑑もよく読んでいた。

そのうち、親もわかってきたので、読み聞かせの際、昔話の割合が大きくなっていった。下の子ほど、昔話を中心に読んだ。そのときには、上の子も聞いている。第一子からすると、年齢が上がるほど、昔話をたくさん聞くようになった。第一子は小学生になっても、読み聞かせを楽しんで聞いていた。

そのように読み聞かせていると、やっぱり昔話は違う。食い入るように聞いている。子どもたちの反応をみていると、昔話が持つ力を強く認識する。書店に行くと、昔話が絶滅危惧種のように感じられる。私が子どもの頃は、テレビで「まんが日本昔ばなし」を毎週放送していた。なかなかの人気番組で、お堅い(?)教育関係団体が優良番組と認定したりもした。私も大好きで、よく見ていた。「まんが日本昔ばなし」を俗悪番組であると酷評する昔話の専門家の意見も聞いたことがある。テレビ番組は時間枠が固定なので、長い話を短くしたり、短い話を長くしたりという改変が著しいというのが理由だ。でも、あの番組によって昔話に親しんだ人は多かっただろう。

1975年〜1994年という長期間続いた番組だったが、それと同時進行だったか、番組終了後なのか、静かに、ひっそりと、昔話の本は減っていった。テレビ番組が盛り上げて本もふえるのか、というと、そうはならなかった。ちなみに、私の子どもたちが小学生の頃、「まんが日本昔ばなし」をDVDで借りて見せた。本で読む方が面白いと言っていた。小学生になると、自分で昔話の本をガンガンと読んでいた。昔話の本がすべて子ども向けなのではない。大人の資料として作られた本や、大人が読んで楽しむために作られた昔話の本も多い。現在新刊で買える本はずいぶん少なくなったが、ヤフオクやアマゾンで、以前に作られて絶版になっている昔話の本を買うことができる。わが家には、昔話の本が多くなった(大部分が絶版である)。子どもたちが小学生ぐらいになると、大人が読むような本を、普通に読んでいた。

戦後まもない頃は、昔話が劣った非文化的なものという意見が主流をしめ、昔話の改変が大々的に行われたそうだ。正しい昔話を守ろうという人々の努力もあって、昔話は生き延びた。「まんが日本昔ばなし」は最後のあだ花だったのだろうか。

しかし、私は子育てで、昔話のとてつもないパワーを実感した。どんな教育メソッドも、どんな教材も昔話にはかなうまい。現代の人たちは、そんな昔話を忘れ去ろうとしているように見える。現在も、昔話を守り伝えようと努力する人々はいる。ただ、世の中は、昔話の価値を認めず、昔話がニッチな分野になりつつあるのかも知れない。

そもそも、今の親たちは、「昔話」とは何なのか、知っているだろうか。昔話をどのくらい知っているだろうか。昔話を聞いて楽しんだ経験があるだろうか。

未来をになう大切な子どもたちのために、昔話がどれほど大切なものか、伝えたい。間違いなく、人類の至宝だ。

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