独学で大学受験 22 遅すぎるスタート
第一子は勉強が嫌いで、小学4年生ごろまでほとんど勉強しなかった。小学4年生といえば、抽象概念を扱うようになるので、明確に差がつき始める時期。わが家はホームスクーリングなので他人との差は意識しなくてもよいが、そういう問題でもない。
小学生の勉強が理解できないまま大人になると、かなりマズイ。漢字がわからない、計算があやふや、都道府県がわからない、社会の仕組みがわからない、自然の成り立ちもわからない。えらいことですよ、これは。
小学4年生にもなってこれでは、ホームスクーリングどころではない。第一子に「学校へ行きなさい」と言った。たびたびそう言い、だんだん強く言うようになった。ホームスクーリングは失敗だ。いまさら学校へ行ったって、落ちこぼれから抜け出せないだろう。でも、これ以上ホームスクーリングを続けることは無理だ。
第一子は、学校へ行くことを強く嫌がった。で、しぶしぶ勉強するふりをした。ふりをしつつ、サボった。
小学生の間は、独学の教材として、メインに『自由自在』という分厚い参考書を使った。科目別になっていて、2年分が1冊にまとめられている。教科書レベルの説明から始まり、中学の内容まで踏み込んでいる。1・2年生の『自由自在』は算数しかない。3・4年生用は4科目ある。高学年用も4科目ある。4人の子にそれぞれ買った。使い回しはしていない。メイン教材なので、ボロボロになってしまう。
第一子は、ほんとに勉強が嫌いだった。でも、本はよく読んだ。びっくりするほど難しい本でも読んでいた。漢字は読み書きとも危うい。小学生の漢字が読めないし書けない。なのに、難しい本は読める。不思議だ。
勉強しないのでそもそも参考書を読んでもわからないのかというと、そうでもない。あの分厚い『自由自在』を難なく読みこなす。なぜ読めるのかというと、もうこれまでさんざん言ってきたように、幼少期からの怒濤のような読み聞かせとそこからつながっていく読書によることは間違いない。第一子は自分で本を読めるようになってから、昔話を大量に読んだ。これは効いている。やわらかい本をいくら読んでも『自由自在』には太刀打ちできないだろう。昔話は「やわらかい本」ではない。易しいがやわらかくはない。そして、並ぶものを見つけにくいほど奥が深い。
第一子はもう5年生。学校へ行くか、自分で勉強するか。第一子は自分で勉強すると言った。『自由自在』をハイペースで読破する(ふりをした)。何もしなかったことを思えば、「ふり」でもマシだ。
6年生のなかばぐらいから、一生懸命勉強するようになった。自分でも、このままではマズイと気づいたようだ。たくさん本を読んでいたら、勉強しないまま大人になることの恐ろしさに気づく。
とはいっても、遅すぎるんや。もう6年生やぞ。この子の将来はどうなるのだろう? ホームスクーリングを選択した親の間違いだったのか? そうかもしれない。けれども、あんなに勉強嫌いなら、学校へ行っていても勉強するとは思えない。どのみち、落ちこぼれていただろう。この時点で、まさか国立大学に行くことになるなんて夢にも思えなかった。どうにかこうにか、まともな大人になり、なんとかかんとか生きていってくれるだろうか、と祈るばかり。
取り返しがつかないかもしれないけど、できるだけのことは頑張って欲しい、と思っていたのだが、6年生半ばからは、「勉強しなさい」と言う必要がなくなった。まるで別人だ。
小学校の内容をほっといて中学の勉強を乗せることはできない。中1にかけて、小学生の『自由自在』をやっていった。ものすごいハイペースだ。中1の12月ごろ、小学生の内容を終えた。テストをしてみても、まずまずだいじょうぶだろう。中学の勉強へ進める。
ほとんど勉強しない状態から一転して超ハイペースで小学生の内容を短期間で習得できるものなのか。ハイレベルでできた、とはいえないが、おおむねできた。これは、学校に行っていたら、不可能なリカバリだ。学校へ行っていたら、日々の授業が進んでいく。それと全く異なる勉強をしていくのは困難だ。さらに中学生になってしまうと、定期テストに追われる。定期テストを無視して小学生の勉強をするのはまず無理だろう。
ホームスクーリングだからこそ、リカバリができた。いや、その前に、勉強の土台が強固にできていたからこそのリカバリだ。土台とは、読むことと書くこと。大量の読み聞かせと読書、大量の書き写し。これがないと、不可能だった。小学生の勉強ができないまま生きていくしかなかっただろう。
第一子は、中1の12月から中学の勉強を始めた。中学では、旺文社の『総合的研究』という、さらに分厚い参考書を使った。教科書レベルの解説から、高校の内容まで踏み込んでいる。だれからも勉強をならわず、参考書だけで、中学の内容も習得していった。もう、「勉強しなさい」とは言わなかった。日々の生活リズムも自己管理ができるようになっていった。
親は、毎日、その日にやった勉強のノートを確認するだけで、内容を教えることはない。わからないことを質問してくることもない。わからないことがあっても、自分で考えればわかるようになるそうだ。
中3時点で、公立高校の入試問題をやってみた。進学校には届かないが、中学生の平均をそこそこ超えているだろう。2年あまりで中学の内容をマスターしたことになる。
高1年齢春からは、高校の勉強をした。理科基礎4科目、社会全科目を含め、英数国とも参考書と問題集で進めていった。誰からも習うことなく、高校の内容を独学で習得していった。
もう勉強ができない子ではなくなっていた。本人の努力次第では、高校生としてかなり上位もめざせるあたりまで学力がついてきた。あんなに心配し、将来をあきらめもした過去が、なつかしい。