[本を書いた27]国立大学法人法改正
まさか可決されるとは
2023年12月13日
プロ野球のオーナーには2種類あります。
①金は出すけど口は出さない
②金は出さないけど口は出す
①はチームが強くなるけど②は弱体化します。
さて、国立大学は2004年以降②でした。
今回の改悪は③野球経験のないオーナーが監督就任。
まさか可決されるとは…
国の旧帝大支配は小学校まで下りてくる
2023年12月14日
国立大学法人法改正案が可決、成立しました。東大、京大等旧帝大5校の経営権を国が手にする内容です。多数の人には関係ないと思っていませんか?日本の学校体系はピラミッドです。頂点に行われた政策は小中学校にまで必ず下りてきます。それも増幅しながら。
2004年の国立大学法人化以降、国立大学への国庫支出を減らし続け、自ら稼がなければやっていけない仕組みを年々強化しています。国立大学が株式会社化しつつあります。今回の法改正はその方向性を露骨に強化するものです。金を稼ぐことが善、稼げないのは悪。当然、学問は衰退します。現にしています。
国が国立大学を支配下に置きたい理由は明白で、軍事研究推進と新自由主義推進です。軍事研究は表向きは国防のためですが、実体は金儲けです。ひとくくりに「新自由主義推進(金儲け真理教)」と見ていいでしょう。小学校の教育内容、カリキュラム、学校の体制にも、さらにさらに教義が行き渡ります。
今回の法改正はプロセスの公文書さえなく、突然降って湧きました。大学教員たちが反対の声をあげましたが、ごく短期間にろくな審議もなく強行採決です。反対の余裕さえ与えない超スピードでした。しかも、メディア報道がほとんどない。裏金事件にかき消されています。多くの人が知らないままに。
裏金事件は大事件ですが、国立大学法人法改悪と比べれば瑣末な事件に見えます。小さな事件を騒ぎ立てて国民の目を釘付けにしておいて、そのすきに瞬時に大悪を通してしまう。結果から見ると裏金事件が陽動作戦にすら見えてしまいます。本当に、本当に、これは大事件なのです。
2004年というと、ゆとり修正路線へ転換を始めた時期です。それ以降の学校教育はどうだったでしょうか? 受験の低年齢化、小学校から他人を蹴落とし競争激化、モンスターペアレントの増加、不登校の増加。これらの事象はすべて金儲け真理教で説明がつきます。金儲け以外のことはどうでもいいとばかり。
学校教育では、学力だけでなく幅広い人間性の涵養も大切だった(過去形)はず。金儲け真理教は必ず格差を拡大します。勝者はさらなる利益を求めるので、敗者の裾野を拡大しなければいけません。勝者が政治を握るかぎり、格差是正は勝者の利益を減らすので本気で取り組むことはありません。
学力も金儲け真理教の教義に合致する部分に「集中と選択」を行うため、どんどんいびつになっていきます。これまでもそうですが、今後はさらにさらに非人間的なエリートが増大しそうです。自覚しようとすまいと、私を含めほとんどの人は敗者です。金儲け真理教のプロパガンダに乗るのはやめませんか?
この改悪には伏線がある!
2023年12月15日
①このたびの国立大学法人法改悪は寝耳に水のようなものですが、伏線があります。世界トップレベルの研究力の実現に向けた「国際卓越研究大学」制度がそうです。趣旨は素晴らしいのですが、実は毒饅頭で、大学側に警戒がありました。(続)
②大金をあげるから結果を出せというもので、認定校には国が経営権を持ち、トップダウンのガバナンスを強化する仕組みを持ちます。これは学問の自治を放棄する所業です。大学は会社ではありません。すべての研究は何らかの形で世界に、国に寄与しますが、「すぐに見える形で」とは限りません。(続)
③学問の裾野を広げなければ学問の発展は望めませんが、新自由主義(金儲け真理教)は「すぐに見える形」に選択と集中を行います。学問は痩せ細り、全体の水準は低下、劣化します。これが2004年の国立大学の独立法人化以後、生じた現実です。わが国の学問は著しく劣化しています。(続)
④研究者の能力が劣化したのではなく、お金がないので研究のしようがないのです。稼げない学問の切り捨てです。学問が劣化したので、さらなる選択と集中を行おうというのが国際卓越大学です。発想が逆なのでさらなる劣化が目に見えています。東大・京大等旧帝大がこぞって卓越大学に申請したのに(続)
⑤東北大学以外全てが落選しました。東大・京大も落選です。選考意見を見るとガバナンスに問題ありと読めます。つまり学内の抵抗があったと読めます。文科省サイドはそう認識したと見えて、「そっちがその気なら」と出してきたのが今回の法案でしょう。というのも、卓越大学の一部を抜粋した(続)
⑥内容だからです。つまり卓越大学の核心部分は国が大学の統治権を持つということだったのです。アメでなびかなかったので強引にやってやろう、です。裏金問題で混乱し、政権麻痺し、政策が進められない状況の中で、この法案だけステルス的に可決されました。よほどの重要案件だとわかります。(続)
⑦今回の結果が小中学校あるいは幼稚園にまで下りてきて行き渡るのは早くても2、3年以上かかるでしょう。多くの国民は気づかない。原因が今回の国立大学法人法改悪だとも気づかない。知らぬ間に大多数が敗者に追いやられる。できることがあるとすれば、競争原理に乗せられないことではないか。(了)