独学で勉強するために 6(読書2)

前回は「読み方」をお話ししましたので、今回は「何を読むか」です。

マネ(モデリング)のターゲットとしての読書であることを考えます。読書は、趣味や楽しみや実用のためにもするもので、そうであるなら、私が何を言おうと関係なく、どんな本でも読めばいいのですが、学びの土台作りであるなら、何を読んでも同じだ、とはなりません。

昔話→文学作品→古典(文学に限らずどんなジャンルでも)→内容の重い本(最初は新書から)

だいたいこういったステップではないかと考えています。その中でも、最初のステップ、昔話は非常に大事で、最大級に強調してもしすぎません。昔話をしっかり積み重ねれば、そのあとのステップは、しぜんと備わってくるでしょう。

昔話とは、文字で伝えられた物語ではなく、誰かが創作した物語でもなく、無数の名もなき人びとが語り伝えてきた物語です。桃太郎、カチカチ山、舌切り雀、鶴女房、わらしべ長者などがそうです。こういった口承文芸は、世界中にあります。三匹の子ぶた、はいかぶり(シンデレラ)、白雪姫なんかもそうです。

昔話は、まったく架空の物語ですが、地域の歴史のように語る「伝説」や、世界や国の成り立ちを語る「神話」など、口承文芸全般に拡げてもいいと思います。

口承文芸は、語り口の特徴をもっており、世界中で共通しています(そのへんの理論は小澤俊夫さんの本などに詳しいです)。登場人物は極限まで少なく、付随する描写は省き、シンプルに、淡々と語ります。極端な描写、くっきり原色、現実性をもたない抽象化。

これって、まさに構造理解です。

勉強の苦手な子は、あれやこれやいっしょくたにしがちです。勉強の得意な子は、頭の中で、構造をつくりながら、整理していきます。たとえば、100のことがらがあるとき、それを乱雑に散りばめたままにするのか、共通点でくくりながらグループ化するのか。4つのグループにわけると、25ずつぐらいになります。それをさらに4つのグループに分けると、6ずつぐらいになります。このようにすると、覚えることも理解することも容易になります。それぞれのグループの関係を構築すれば、全体が1つとして理解できるでしょう。


現実は無限に多様であるとしても、構造的な理解をすれば、多様さを整理し、全部を手中におさめることが可能です。

その素養を身につけるために、昔話などの口承文芸をモデリングすることが、非常に有効であると、わが家では気づきました。

昔話などの口承文芸は、今や語る人がめっきり少なくなり、多くは書物に収められています。語りをそのまま記録した一次資料もいいですが、読みやすいように改めた再話でもいいです。子どもには再話でないと難しいでしょう。そのさい、口承をくずしたような本はおすすめできません。おおざっぱな見分け方として、素朴で、飾らないものは、だいたい口承を守っていると考えてもいいでしょう。きれいな作り、かわいい作り、おしゃれな作りなど、外見を飾ったような本は、要注意です。

口承を大切にしている本は、そうとうたくさんあります。最近はあまり多く作られなくなってきているので、図書館で探すといいでしょう。もちろん、書店にもあります。あまりにも多いので、全部を読むことは、ちょっとできないでしょう(全部がどれだけかもわかりませんが)。

おとなでも、昔話などの口承文芸は非常に有効です。幼児だけのターゲットではありません。加速学習の土台作りは、口承文芸にある。仮説ですが、自信があります。地頭、学習意欲、抽象概念、生きる意欲などを無限に生み出します。おそらく、発想力、課題発見、課題解決、イノベーション、真摯さ、共感力など、あらゆる素養を生み出すことにもなるでしょう。エビデンスはありませんが…。

次回へつづく。

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