昔話の残酷さが大切

昔話は残酷だと言われます。
たぶんこの残酷さもポリコレ違反なのでしょう。

私は昔話の残酷さこそ、子どもたちの健全な成長に不可欠だと確信しています。
もちろん、もちろん、わが家では昔話の残酷さを排除せず、積極的に子どもたちに与えてきました。

有名な「シンデレラ」は、グリム童話では「灰かぶり」というタイトルで、しかも多くの人が知っている内容とは異なっています。
最後の場面で、意地悪な2人の姉が、ハトから目玉をつつき出されて盲目になってしまいます。

これは中世の刑罰の名残で、あまりにもえげつないので、子どもへの読み聞かせではカットしようという人もいます。
または「2人の姉は厳しい罰をうけました」とぼかしたり。

同じくグリム童話の「白雪姫」のラストシーンでは、白雪姫を殺そうとした女王が真っ赤に焼けた鉄の靴をはかされ、死ぬまで踊らされました。
これも物議をかもします。

私はこれらをカットも改編もすべきではないと思います。
そのまま子どもに読み聞かせるのがよいと確信しています。
子どもが幼ければ幼いほど大丈夫。
ある程度年齢が上がってからだと、受け付けなくなるかもしれません。

いっさいの暴力、いっさいのいじめ、いっさいの野蛮な行為はあってはなりません。
だからこそ、「あってはならない」ということを学ぶべきです。

昔話を読み聞かせると、子どもはお話の中を生きます。
ストーリーを体験します。
どんな残酷なシーンも、そこへ至るまでの文脈があります。
文脈を無視して残酷らしき言葉やシーンだけを切り取って「残酷だ!」と騒ぐのは賢明とは思えません。

「かちかちやま」「三匹の子ぶた」は昔話の定番中の定番で、しかも残酷な要素がはいっているので、改変度を探るメルクマールとして有用だと考えています。

昔話なので語り方に揺らぎがあるのはとうぜんですが、「かちかちやま」は仇討ち、「三匹の子ぶた」は食う食われるの動物界がテーマなので、残酷をはずせないし、弱めることも不適切です。

仇討ちが成立するには、最初の事件への怒りが必要です。
タヌキがおばあさんを殺した上、おじいさんにばば汁を食わせる。
えげつないですね。
でも、タヌキにはタヌキの事情があります。
もともと動物たちのエリアだった土地を人間が奪い、田畑に変え、動物たちを排除し、タヌキが抗議したらとらえられてタヌキ汁にして食われる寸前。
タヌキからすると、人間こそえげつない。
じいさんにばば汁を食わせるぐらいしなくては怒りがおさまらないでしょう。
しかし人間はやられたらとことんやり返す。
報復は人間に変わってウサギが担当しますが、そのやり方は執拗でえげつない。
最後は溺死させてしまう。
じつに、人間界、自然界の実相ではありませんか。
これが残酷だから改変するというのは、子どもたちにはウソを教えておけということでしょうか?

「三匹の子ぶた」の場合、手抜き工事の長子、次子がオオカミに食われます。
改変された昔話では、逃げるのですが、本当は食われなければなりません。
でないと、手抜き工事が正当化されてしまう。
命を守るための危機管理をおろそかにしてもよいと子どもたちに教えてしまう。
三子は堅実な工事(危機対策)をしたため、オオカミが子ぶたを食うことができず、唯一見つけた要塞の弱点として煙突から侵入します。
ところが三子はそれすら対策済みで、大鍋に熱湯をわかして待ち構えており、そこへ落ちたオオカミを煮込んで食ってしまいます。
ブタは雑食で貪欲ですからオオカミすら食います。
知恵比べ、危機管理、動物界の実相と、見事なお話です。
改変されると、ブタが食われず、オオカミも食われない(逃げてしまう、または謝って許してもらう)なんて、メチャクチャなお話になってしまいます。

子どもたちにあえて残酷な場面を伝えるということには大切な意味があります。

人類は世界中で、昔々から、戦争や刑罰や犯罪で、筆舌に尽くしがたい残酷・残虐なことをしてきました。
現代でも相変わらずです。
昔話がいくら残酷だといっても現実と比べものになりません。
人間は残酷な仕打ちをする生き物だということを知らねばなりません。
そして、なくしていかねばなりません。
そのためには、臭い物に蓋、ではなく、実相を知ることが不可欠です。
蓋をしては悪しきものが温存され、エスカレートしていきますよ。

残酷の最たるものは戦争です。
戦争の記録写真には無残な遺体がごろごろと写っていますが、残酷に蓋をして育った子どもはそのような記録写真を見ることができない。
『はだしのゲン』『猫は生きている』といった体験マンガや絵本でさえも耐えられない。
戦争展も耐えられない。
だったら、戦争の悲惨さをどうやって理解するのでしょうか?
戦争をゲームやアニメ感覚で想像し、「○○国なんて破壊してしまえ!」と平気で言う。
戦争になると、「灰かぶり」「白雪姫」のラストシーン、「かちかちやま」「三匹の子ぶた」などがバカバカしくなるほど残酷きわまる現実に子どもたちもいやおうなく巻き込まれます。

怖ろしいことを知らねば怖ろしいことはわかりません。
リベラルのポリコレは戦争に反対しているようで実は加担しています。
いじめだってなくなるわけがない。
残酷な犯罪だってなくなるわけがない。

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